アメリカやヨーロッパにおけるCBD製品市場は今や世界的なトレンドになりつつあります。
アメリカのある調査ではアメリカの約14%の人がCBDを使用しているとの報告もあり、オイルや化粧品など様々なCBD製品は消費者の間では日常の定番品と言えるものにもなっています。
この流れは日本にも波及しており、日本でもCBDへの関心は日に日に高まっています。そんなCBDですが、ある論文ではCBDの効果を最大限に受けるための研究が発表されています。
今回はCBDの効果を最大限引き出すとされる「アントラージュ効果」についてご紹介していきます!
CBD(カンナビジオール)とは
CBD(カンナビジオール、英:Cannabidiol)とは、植物の大麻で生成されるカンナビノイドと呼ばれる成分の一つです。大麻由来の成分と聞くと「麻薬」を連想されるかもしれませんが、CBDは「陶酔」や「ハイになる」といった症状を引き起こさない成分です。また、WHO(世界保健機関)でも安全性と一定の効果、効能があることが報告されています。
医療、美容、健康といった幅広い分野での効果が期待されており、アメリカ・ヨーロッパを中心に効果を利用した数多くのCBD製品が販売されています。
アメリカでは大麻由来の成分(CBD)を利用した医薬品として初めて「エピディオレックス(Epidiolex®)」が、国から認可され、難治性のてんかん治療薬として処方されています。
※CBDについて詳しくはこちらの記事を合わせてお読みください。
アントラージュ効果(Entourage effects)とは
アントラージュ効果とは大麻に含まれる、カンナビノイドやテルペン、フラボノイドといった成分を同時に摂取することにより、これらが相互作用し、エンドカンナビノイドシステム(ECS)に影響を与え、負の副作用を抑えたり、より高いレベルでそれぞれの持つ効果を発揮するといったものです。
例としてはTHCの短期記憶障害の副作用をテルペンの一つであるピネンが防止したり、柑橘系の香りを持つテルペンであるリモネンとCBDが不安を和らげるために一緒に働く可能性があります。
このようにTHCやCBDといったカンナビノイド成分を単体で分離したものでも効果は期待できますが、植物の大麻に含まれるそのほかの成分を分離・除去することなく一緒に摂取することで、THCやCBDといったカンナビノイドやテルペンの持つ作用を合わせて利用することが重要という考えです。
このアントラージュ効果の理論は、大麻やカンナビノイドを長年研究してきた神経科学者及び薬理学者であるイーサン・ルッソ博士により提唱されており「Taming THC: potential cannabis synergy and phytocannabinoid-terpenoid entourage effects」と呼ばれるレビューで詳細に説明されています。
※イーサン・ルッソ博士の論文はこちら(英文です)
THCとCBDは一緒に働く??アントラージュ効果の例
THCを服用した後に一部の人々は不安、空腹、鎮静などの副作用を経験するとされています。
動物と人を対象にしたある研究では、このようなTHCの副作用である短期記憶障害や、不安といったもの、CBDとTHCを一緒に摂取し、アントラージュ効果を得ることにより軽減にする可能性があると示唆されています。
また、アメリカのサンフランシスコで行われた研究では、THCとCBDを組み合わせると、脳のがんと乳がん細胞でテストした結果、THCかCBDの単体の化合物よりも、強力な抗腫瘍効果が得られたと発表されています。
2010年に行われたの研究では、難治性のがんに関連した疼痛に苦しむ患者へは、純粋な高濃度のTHC成分よりTHCとCBDを組み合わせたものの方が効果があったという報告もあります。
単離や合成カンナビノイドに効果はないのか??
単離されたTHCやCBDや合成カンナビノイドは現在アメリカや複数の国では医薬品に利用されています。
合成THCを利用した医薬品はマリノールとセサメットと呼ばれるもので、がん関連の吐き気または痛みを治療するために処方されるアメリカのFDA(食品医薬品局)承認されており、一定の効果と安全性を臨床試験で実証されているものです。
アントラージュ効果の観点からでは、これらの分離薬はTHCとCBDの両方を含む併用薬ほど効果的ではない可能性があります。
しかし、アントラージュ効果がまだ研究段階であり、考え自体がより高いレベルでの効果を期待できるというものなので、決して単離したものや合成したカンナビノイドに効果がないというわけではありません。
また、日本のようにTHCが違法である国もあれば、THCの作用を好まない、また不必要な患者もおり、アントラージュ効果も単離や合成されたカンナビノイドも時と場合、目的によってそれぞれ重要なものです。
アントラージュ効果に重要なテルペンとは??
アントラージュ効果において重要な役割の一端を担うにはテルペンです。テルペンは大麻やその他の植物や果物、一部の昆虫などによって生成されるものです。
テルペンは植物の香りや風味を構成する重要な要素であり、私たちの周りでは食品や飲料の添加物、アロマオイルや香料の原料、洗剤、天然ゴムまで様々な用途で利用されています。
大麻に含まれる主なテルペンはミルセン、カリオフィレン、リモネン、ネリロールといったものがで、人の身体にも様々な作用をもたらすとされています。例として、ネリロールはラベンダーやベルガモットに含まれるテルペンで、リラックス効果があるとされています。
※テルペンについての詳しくはこちらの記事を合わせてお読みください。
THCやCBD以外のカンナビノイドの持つ可能性
大麻にはTHCやCBD以外にも100種類を超えるカンナビノイドが存在するとされており、それぞれが固有の効果を持ち、私たちの身体に作用すると考えられています。
THCやCBDに注目が集まっていますが、アントラージュ効果を考えた時にはその他のカンナビノイドも無視するわけにはいきません。
大麻に含まれる主要なカンナビノイドはTHCとCBDですが、下記の2つは別のカンナビノイドとして期待されています。
CBN(カンナビジノール)
CBNはTHCやCBDより以前に初めて発見されたカンナビノイドです。CBNは主にTHCの副産物として生成されるものであり、新しい大麻にはほとんど見られず、古い大麻に多く含有しています。
効果は抗菌、神経保護作用、食欲増進、緑内障、抗炎症作用、鎮痛作用、がんなどへの効果の可能性が示唆されています。
※CBNについて詳しくはこちらの記事を合わせてお読みください。
CBG(カンナビゲノール)
CBGはカンナビノイドの「母」や「幹細胞」と呼ばれることもあり、これはCBGがTHCやCBDなどの前駆体であることに由来します。近年非常に注目されているカンナビノイドではありますが、大麻自体にごく微量しか含まれていないため、抽出にも非常にお金がかかることがネックになっています。
CBGもカンナビノイド受容体であるCB1やCB2に作用するため、神経保護作用、がん細胞の阻害、抗菌、筋肉弛緩、ストレス緩和、皮膚疾患などへの効果が期待されています。
※CBGについてはこちらの記事を合わせてお読みください。
CBDとアントラージュ効果を得るには??
具体的にアントラージュ効果を得るには、なるべく植物の大麻をそのままに近い状態、すなわち「植物エキス」として摂取することが一番の方法になります。
CBDの場合であれば、主に抽出の度合いで、フルスペクトラムCBD、ブロードスペクトラムCBD、CBDアイソレートという3つの抽出度合いで分けられることが多く、この中であれば、フルスペクトラムCBDがアントラージュ効果を得るには最適といえます。
フルスペクトラムは全草抽出に近いものであり、CBDやその他のカンナビノイド、テルペン、フラボノイドといった成分がすべて含まれています。しかし、そのためTHCも微量ではありますが含まれている可能性があり、THCは日本では規制の対象となっているため所持、譲渡などは違法となります。
つまり、日本ではフルスペクトラムCBDを利用することはできず、ブロードスペクトラムCBDかアイソレートCBDを利用しなければいけません。
ブロードスペクトラムもフルスペクトラムに非常に近く、フルスペクトラムからTHCの成分を除去したもですので、アントラージュ効果を十分に期待することが出来ます。
またCBDアイソレートに関してはCBDを単一成分として分離したものではありますが、製品にする段階でテルペン等を追加し、製品によってはアントラージュ効果に近いものを得られるものもあります。
まとめ
今回はアントラージュ効果についてご紹介しました!CBD自体にも多くの効果が期待されていますが、その効果をもっと高いレベルで得ようと思うとアントラージュ効果は非常に興味深い理論です。まだまだアントラージュ効果も研究段階ではあるとされていますが、医療大麻が利用され、さまざまな症状の緩和や治療が行われていることを考えると納得できます。
日本では大麻は違法なため、THC以外のCBDとその他のテルペンによってアントラージュ効果を得ることは可能ですが、フルスペクトラムCBDについてはご説明したように注意が必要です。
CBDを現在使っている方、これから検討している方も、今後はアントラージュ効果に注目して製品を選ぶことをしてみてもいいかもしれません。
この記事が皆さんの正しい知識を得るお手伝いなれれば幸いです。
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