CBDなどの大麻由来の成分は一般的にカンナビノイドと言われておりますが、実はこのカンナビノイドは大麻で生成されるものだけではありません。今回は大麻の中ではなく、私達の体内で合成されるカンナビノイド、「エンドカンナビノイド」についてご紹介します!
カンナビノイドの分類
カンナビノイドとは、一般的には主に植物の大麻で生成されるCBDやTHC、CBN、CBGなどの成分を総称してカンナビノイドを指しますが。他にも種類があり、詳しくは大きく分けて下記の3つに分類されています。
今回はこの中のエンドカンナビノイドについてご紹介していきます。
- 植物性カンナビノイド(Phytocannabinoid)
- 合成カンナビノイド(Synthetic cannabinoid)
- 内因性カンナビノイド(エンドカンナビノイド、Endocannabinoid)
植物性カンナビノイド(Phytocannabinoid)
植物性カンナビノイドはフィトカンナビノイドとも言われ、植物の大麻で生成されるカンナビノイドを指し、100種類以上あるとされています。一般的にカンナビノイドと表現されるものはこの植物性のカンナビノイドを指すことが多いです。
日本でも関心が高まっているCBDもカンナビノイド成分の一つであり大麻の抽出物の計40%までの割合を占めることもあります。
カンナビノイドにはそれぞれ異なった効果がありますが、良く知られているのはTHCとCBDであり、両者ともに医療に応用できる薬効があり、医療用大麻や医薬製剤として利用されています。
※CBD、THCについて詳しくはこちらの記事を合わせてお読みください。
合成カンナビノイド(Synthetic cannabinoid)
合成カンナビノイドは、THCやCBDといったカンナビノイドの分子構造を元に人工的につくられたカンナビノイドです。これらもTHCやCBDと同じように作用し、それぞれが効果を発揮します。
アメリカなどでは一部の医薬品に利用されていますが、日本では脱法や危険ドラッグとして問題になり、その多くが麻薬や禁止薬物とされています。
医薬品に使用されている合成カンナビノイド
- ドロナビノール(マリノール)(THCの異性体)
がん治療やがん治療薬の副作用に対する、悪心や嘔吐の治療又は予防、およびエイズ患者の食欲増進に使用される薬。 - ナビロン(セサメット)(合成THC)
エイズ患者の食欲不振と体重減少に使用される医薬品。
エンドカンナビノイド(内因性カンナビノイド)
人間の身体にはもともとカンナビノイドを体内で合成する機能があり、そこでは10種類ほどのカンナビノイドが合成されています。これらはエンドカンナビノイド(内因性カンナビノイド)と呼ばれ、その中でも大きな影響を与えるのがこの二つです。
- アナンダミド(N-アラキドノイルエタノールアミン)
- 2-AG(2-アラキドノイルグリセロール)
カンナビノイドの身体への働き
カンナビノイドの働きは、主に細胞間のシグナル伝達を行う物質であるメディエーターとしての役割を担い、受容体と呼ばれるものと相互作用しそれぞれの効果を発揮します。
カンナビノイド受容体
カンナビノイド受容体は、CB1とCB2と言われる二つのタイプの受容体を指し、エンドカンナビノイドを含むカンナビノイドがこの二つの受容体と相互に作用することによって、さまざまな効果を発揮します。
身体のいたるところに存在する受容体ですが、CB1は主に脳の中枢神経系や、肺、肝臓、腎臓で発現し、運動の調節や記憶・学習といった脳の機能に作用します。
CB2は主に免疫系、造血細胞、末梢神経系に分布し、その分布から、炎症細胞や免疫細胞の分化や機能の調節に関与していると考えられてます。
カンナビノイド受容体はこの他にも数種類あるとされていますが、CB1とCB2以外のものは同定されていません。
カンナビノイドと受容体が身体に作用する仕組み
簡単に説明するとカンナビノイドが「カギ」のような役割、受容体が「カギの穴」の役割をし、この二つが合致することにより、カンナビノイドが持つ効果が身体に作用するという仕組みです。
具体的にはTHCやCBDといった異なるカンナビノイドは、結合する受容体に応じて異なる効果を発揮します。たとえば、THCは主にカンナビノイド受容体である、CB1に作用し、これらは脳や脊椎などの中枢神経系に多いことから、精神活性作用を生じ、大麻の一般的なイメージである「多幸感」「陶酔感」を感じる「ハイ」といった状態に関与します。
また、CBDはこれらのCB1、CB2のカンナビノイド受容体とは親和性が低く、カンナビノイド受容体ではない他の受容体と相互作用します。
例としては、疼痛知覚や炎症、体温を調節するバニロイド受容体(TRPV-1)と結合し、これにより、抗炎症作用や疼痛緩和という効果を発揮するとされています。
エンドカンナビノイド① アナンダミド
アナンダミドはサンスクリット語で「至福」を意味する「アナンダ」が由来であり、快感などに関係する脳内麻薬物質の一つとも考えられています。
アナンダミドは中枢神経系のほか、末梢の各種器官・組織でも機能しており、神経系においては主にCB1カンナビノイド受容体、末梢(主として免疫系)では主にCB2カンナビノイド受容体を介して行われます。
カンナビノイド受容体は初め、大麻に含まれる主要なカンナビノイドの一つであるTHCに対して相互作用する受容体として発見されました。しかし、私達の身体にもCB1およびCB2受容体に作用する物質があるに違いないとの仮説から研究が行われ、その結果アナンダミドが発見されました。
アナンダミドの身体への作用、影響
アナンダミドは中枢神経系では、作業記憶、睡眠、鎮痛、摂食の調節、動機づけや快感の形成など、心理・行動に対する多彩な役割があると考えられています。
子宮での胚の着床にも重要とされ、また免疫抑制作用を示し、白血球などを介して免疫・炎症の調節に関与すると考えられています。
アナンダミドは、痛みのシグナル伝達に関係するバニロイド受容体(TRPV1)の内因性リガンドでもあると考えられている。また、多くの科学者は、アナンダミドが「ランナーズハイ」や運動後の爽快なスッキリとした「至福」な感覚の要因であるとしています。
アナンダミドは人間のゾーン状態にかかわるとされており、CBDによりアナンダミドが活性化し、人がゾーン状態に入りやすい状態にすると言われています。
ちなみに黒コショウには、アナンダミド再取り込み阻害剤であるアルカロイドのギネシンが含まれており、これにより、アナンダミドが脳内に多くとどまり、アナンダミドの生理学的効果を高める可能性があるとされています。
※CBDとアナンダミドのゾーンに状態について詳しくはこちらの記事を合わせてお読みください。
エンドカンナビノイド② 2-AG(2-アラキドノイルグリセロール)
研究によりアナンダミドがカンナビノイド受容体であるCB1に対し、部分作動薬としか作用せず、CB2とも親和性が低いことから、アナンダミド以外に作動薬、リガンドとして作用するものがあるのではないかという考えから研究がすすめられ、発見されたのがこの2-AGです。
このことから2-AGはアナンダミドより重要な役割を担っており、真のエンドカンナビノイドと言われることがあります。
2-AGはCB 1受容体の完全な作動薬として作用し、CB2受容体の一次内因性リガンドです。
2-AG(2-アラキドノイルグリセロール)の身体への作用、影響
2-AGは、私たちの日常の健康において多くの役割を果たしているとされています。その主な仕事はCB2受容体に結合することで、炎症を軽減するのに役立ちます。
また、2-AGカンナビノイドはCB1受容体の機能にも関与しているため、研究により、私たちの健康のさまざまな面に寄与する可能性が示唆されています。
下記が2-AGが身体作用に影響すると考えられているものです。
気分
研究では、脳内の2-AGレベルに変化があると、気分が悪化することが示されています。研究者は、エンドカンナビノイドの変化により、抑うつ、緊張、全般的な気分障害が増加することを発見しました。骨の形成
アナンダミドと2-AGの両方が骨に存在します。研究では、2-AGが交感神経終末の CB1受容体を活性化することにより、骨の形成に重要な役割を果たすことを示唆しています。生殖機能
研究により、2-AGとアナンダミドのレベルが妊娠中に変化することが発見されました。
研究者たちは、2-AGにより、CB2受容体を活性化させることが不妊症の治療に役立つと考えています。記憶
大麻はあなたの記憶を空にするという悪い評判を持っていましたが、最近アルツハイマー病の治療または治療法としての研究があります。治療法はまだまだ表に載っているものではありませんが、科学者は予防ツールとして使用できると考えています。2-AGの抗炎症特性により、研究者はこの内在性カンナビノイドが脳を保護し、 アルツハイマー病に関連する記憶喪失を助ける役割を果たすと考えています。それは認知機能にも役立つかもしれません。睡眠
研究では、2-AGがREM睡眠のトリガーとして作用し、良質な睡眠を得ることができない不眠症などに対する潜在的な治療法になる可能性が示唆されています。疼痛緩和
研究では、高レベルの2-AGが神経障害性疼痛に役立つ可能性があることが示されています。科学者は、このエンドカンナビノイドが神経内において、痛みの信号が通過する経路の感度をコントロールできる可能性があると考えています。
エンドカンナビノイドシステム(ECS)
エンドカンナビノイドはエンドカンビノイドシステム(ECS)において重要な役割を担い、エンドカンナビノイド、カンナビノイド受容体や相互作用による効果は、エンドカンナビノイドシステム(ECS)を構成する一部です。
エンドカンナビノイドシステム(ECS)は人のホメオスタシス(恒常性)と言われる機能を維持し改善していくうえで大きな影響を与えることが研究によってわかっています。
ECSは人の生命活動に関する機能調節に関与し、痛み、免疫反応、食欲、エネルギー調節、気分、および記憶といったものに影響し、これらはECSによって管理される機能の一部分にすぎないとされています。
このECSに欠陥や問題があると、さまざまな症状や疾患に影響し、これらをエンドカンナビノイドを体内で合成する又は外部からのCBDやTHCといったカンナビノイドで補うことで病気の予防や健康の維持が可能とされています。
※エンドカンナビノイドシステム(ECS)について詳しくはこちらの記事を合わせてお読みください。
エンドカンナビノイド欠乏症??
身体は自然にアナンダミドや2-AGといったカンナビノイドを必要に応じて合成しますが、科学者は、場合によってはECSが効果的に機能するのに十分なエンドカンナビノイドが合成されないと考えています。
この状態はエンドカンナビノイド欠乏症と呼ばれ、これによりホメオスタシスに対するECSの機能が弱まり、結果複数の健康に関する問題と病気に関連するとされています。
CBDや他のカンナビノイド身体の外から補給する
エンドカンナビノイド欠乏症の場合に研究者は、CBDなどのカンナビノイドを補うことで、CBDなどのECSが適切に機能し、病気を防ぎ、健康の改善につながるという証拠を発見しました。
このように外的ストレスや老化などにより、体内で生成されるはずのエンドカンナビノイドが不足し、健康上の問題や病気を防ぎ、ホメオスタシスを維持するためカンナビノイドを補給すること必要になります。
これがCBDなどのカンナビノイドを摂取し、さまざまな効果が期待されている理由であり、人の身体にとって有用で、医療、健康、美容など幅広い分野に効果がある理由と言えます。
まとめ
今回はエンドカンナビノイドについてご紹介したしました。エンドカンナビノイドは体内で合成され、カンナビノイド受容体と相互作用することで、人のさまざまな機能に関わっています。しかし、時としてエンドカンナビノイドが欠乏することがあり、これにより身体の機能が低下し、関連した疾患や症状を引き起こすとされています。
このようにエンドカンナビノイドは私達の身体の機能に深く関わっており、その機能が上手くいかないと私達の健康に支障をきたします。これを予防又は改善させるするためには、外部からCBDや他のカンナビノイドを摂取し、エンドカンナビノイドやECSの機能を改善、回復させることで、健康に関する疾患や症状を改善することができるという事です。
この記事が皆様の少しでも正しい知識を得るお手伝いとなれれば幸いです。
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