現在、日本では大麻取締法及び麻薬取締法によって、所持や譲渡が取締りの対象となっている「大麻」。
世界的に見ればカナダやアメリカの複数の州での医療用大麻、嗜好用大麻の合法化されており、日本でも取締り以外の大麻に関するニュースが多くみられるようになってきました。
「大麻」に関連してTHCやCBDという言葉を聞いたり、見たりする機会も以前よりははるかに多くなってきたかもしれません。そこで今回はTHC(テトラヒドロカンナビノール)についてご紹介していきたいと思います!
THC(テトラヒドロカンナビノール)とは?
THC(テトラヒドロカンナビノール)とは英語で Tetrahydrocannabinolの略称であり、THC以外にも「Δ9-THC」と表記されることもあります。
THCは植物の大麻で生成されるカンナビノイドの成分の一つであり、CBD(カンナビジオール) と共に大麻の主要な成分です。
THCには、「ハイ」、「陶酔感」、「多幸感」などを感じる精神活性作用があり、品種にもよりますが、大麻にはTHCが10~15%パーセント程度含まれているとされています。THCは全身に存在するカンナビノイド受容体と相互に作用することで作用を発現します。
日本では大麻と共に大麻取締法と麻薬取締法により規制の対象となっております。
THCとCBDの違い
THCとCBDは同じく、植物の大麻で生成される主要なカンナビノイドの成分です。しかし、効果や法律、イメージなどさまざまな部分で違いがあり、下記は一般的に対比されるTHCとCBDの違いです。
- 身体への効果
THCは「ハイ」、「陶酔」、「多幸感」といったものを感じる、精神活性作用がありますがCBDには精神活性作用が無く、逆に抗不安や抗ストレスの作用があるとされていることから、THCは「ハイ」になる、一方でCBDでは「リラックス」するという正反対な作用があると言えます。 - 日本の法律
日本ではTHCは「麻薬及び向精神薬取締法」により麻薬に指定されており違法です。
CBDは一部で規制はあるものの合法的に使用や販売、購入が可能であり、THCは違法、CBDは合法という違いがあります。 - 嗜好用大麻と医療用大麻
医療用、嗜好用という観点から、この二つの違いを述べると、医療用大麻の場合はTHCとCBDの含有する割合が1:1やCBDの含有レベルの方が高いといった場合がありますが、嗜好用大麻の場合は殆どの品種において、THCの含有率が高い傾向があります。これは医療用大麻はCBDの治療効果に重点を置いているのに対して、嗜好用大麻は嗜好用としてのTHCにより「陶酔感」や「多幸感」を得ることに重点を置かれていると言えるかもしれません。 - 作用する器官
THCとCBDとの違いの一つは、作用する身体の器官にもあります。「ハイ」や「陶酔感」などの作用にも見られるように、THCの成分と相互作用するカンナビノイド受容体は中枢神経や脳に集中しており、CBDが作用する受容体は、免疫系、神経系全体や肌など身体全体に分布しています。
※CBDについてはこちらの記事を合わせてお読みください
違法薬物としてのTHC
日本ではTHCは「大麻取締法」並びに「麻薬及び向精神薬取締法」にて規制されている成分です。
1961年の「麻薬に関する単一条約」、1971年の「向精神薬に関する条約」により、大麻及びTHCは現在でも国際的にも、薬物の分類(スケジュールI から スケジュールV、Ⅰの方が危険性が高い)ではモルヒネ、ヘロイン、メサドン、あへん、コカインなどと共にスケジュール Iに置かれており、これは依存性が高く、医療的使用の効果は全くないカテゴリに位置づけられています。
THCの及ぼす身体への作用には、高揚感、不安、頻脈(心拍数が増加している状態)、健忘症、鎮静、弛緩などがあります。THCにより一時的に運動機能にも障害が起こるため、大麻が合法化されている国でも、運転前の大麻の使用は禁止されています。スラングで「マンチ」や「マンチー(Manches)」と呼ばれる、「食後にも関わらず、急な食欲が襲う」といった作用もあります。
国際的にも、これまでは禁止薬物として規制されてきたTHCですが、カナダやウルグアイでの国単位での全面的な大麻の合法化や、アメリカでの複数の州での医療用及び嗜好用大麻の合法化、ヨーロッパの国での大麻使用や所持に関する規制政策の転換による非犯罪化などTHCを含む大麻への見方は変わりつつあります。
医療用大麻としてのTHC
各国の大麻合法化の一因の一つが、大麻の医療的利用(医療用大麻)が挙げられます。歴史的に見ても大麻は世界中で「薬」として扱われてきたこともあり、日本でも「大麻チンキ」として一般的に使われていました。
現在ではアメリカやカナダを中心にTHCを含む医療用大麻は使用されており、医療大麻の治療効果の対象となる症状は250種類以上あるとも言われています。最近まで大麻が法律によって規制されていたこともあり、ここ数年でようやく大麻に関しての、医療分野における研究が公式的に盛んにおこなわれるようになりました。
徐々にではありますが、THCやCBDの身体への仕組み、効能や効果が解明されてきています。これにより、海外では治療効果が認められ、下記のように国からの認可がおりた大麻由来の医薬品もあり、処方されています。
THCの成分を含む医薬品
- ナビキシモルス(サティベックス)
てんかん症状への治療効果があり、THCとCBDの両方の成分を含む経口スプレータイプの医薬品。 - ドロナビノール(マリノール)(THCの異性体)
がん治療やがん治療薬の副作用に対する、悪心や嘔吐の治療又は予防、およびエイズ患者の食欲増進に使用される薬。 - ナビロン(セサメット)(合成THC)
エイズ患者の食欲不振と体重減少に使用される医薬品。
THCの医療効果とは
THCの医療効果としては、鎮痛作用、悪心嘔吐を減らす、抗けいれん、食欲増進といったものがあり、主にこれらはがんへの治療などと並行して使われることが多くあります。
THCには強い鎮痛効果があることから、がん患者の激しい痛みの緩和や、がん治療に用いられる化学療法の副作用である、悪心や嘔吐、食欲不振といった症状の緩和や予防に用いられます。
抗けいれんの作用もあり、前述したサティベックスのようにてんかんの治療にも効果を発揮します。
また、「ハイ」になる「陶酔感」や「多幸感」といった効果は、海外ではうつ病などの心の病の治療、終末期医療、高齢者の慢性的な関節痛や痛みを緩和することと同時に、精神活性作用によって患者の「QOL」を向上させるという意図で使用されている例もあります。
これらは一般的にはTHC単一成分でというよりは、CBDなどを含む植物そのものの「医療大麻」として使用されます。THCにはこれら以外にもさまざま医療的効果があるとされており、現在もCBDと同じく多くの研究が行われている真っ最中です。
THCとCBDは対立するものでは無い
THCとCBDは相反しており、対立するものとしてのイメージがあります。しかし、両方に医療的な効果があるように、この2つは決して対立するのもではありません。
人体に作用する際にはTHCの精神活性作用によって「ハイ」と言われる状態になるのをCBDやその他のカンナビノイド、テルペンなどが適度に調整し遅延させることにより、ネガティブな感情に陥ることを防いだりするとされています。
また、大麻に含まれるTHCやCBDなどのカンナビノイド成分は100種類以上あり、これらが相互に作用することによって身体にさまざまな利益をもたらすとされています。これは「アントラージュ効果」と呼ばれており、THCやCBDといった成分を単一で分離して使用するよりも、植物の大麻としてハーブや漢方のように、すべての成分を一緒に摂取する方がより高い効果を得ることができるというものです。
まとめ
今回はTHCについてご紹介しました。日本では規制されている成分ですが、CBDと同じく医療的な効果があり、海外でが医薬品としても処方されているものです。世界的にはTHCを含む大麻に関しての見方が変わっており、アジアでもタイでは医療大麻が合法化されています。また、お隣韓国でも一部大麻由来の医薬品が処方されるようになりました。
日本でも少しずつ議論されている話題であり、今後の国内でもTHCに関する見方や法律が変わる日が来るかもしれません。
この記事が少しでも正しい知識を得るお手伝いとなれば幸いです。
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