アメリカの複数の州では嗜好用、医療用大麻が合法化されています。
また、これらの合法化をきっかけに巨大な大麻産業が急速に形成され、この市場の拡大は「グリーンラッシュ」と呼ばれています。
世界的にも大麻に関する評価が見直されており、アメリカ以外の国においても、合法化や非犯罪化の流れにあると言えます。
このように様々な大麻に関するニュースが今まで以上に取り上げられ、記事やニュースで「ヘンプ」、「大麻」、「マリファナ」という言葉が聞いたり、見たりします。しかし、実際にヘンプって何?マリファナって?どう違うの?と思っている方もいると思います。
そこで今回はそんな誤解や混乱を解くために「ヘンプ」と「マリファナ」この二つの違いについてご紹介します!
ヘンプもマリファナも植物の大麻
ヘンプ、マリファナは両者ともに広義の意味では「大麻」であり、「植物のアサ」です。両者ともに名称は違いますが、元をただせば「植物の大麻」であることに違いはありません。
ではいったいこの二つの言葉の間にはどのような違いがあり、どのように区別されているのでしょうか?
ヘンプとマリファナの違いを知る前に、大麻とは一体どのようなものであるのかも理解しておくことが重要です。
※大麻について詳しくはこちらの記事を合わせてお読みください。
植物の大麻とは?
大麻(たいま)とは中央アジア原産とされるアサ科アサ属の植物であり、大麻草(たいまそう)とも呼ばれる一年生草本です。日本では縄文時代の、現在の福井県にある「鳥浜貝塚」から「麻縄」が出土しており、約1万年前から大麻との関りが始まったとされています。
大麻の茎の皮の植物繊維は、麻繊維として麻紙や麻布、神道においては神具などに使用され、実(種子)は食用や生薬の麻子仁(マシニン)として、大麻の実の油は食用や燃料など、成分を医療にと様々な形で用いられてきました。
伊勢神宮の神札の「大麻(オオヌサ)」と呼ぶ由来となった植物であり、実生活に重要な三種の草という意味で、紅花(べにばな)・藍(あい)とともに「三草」のひとつに数えられ、米と並んで主要作物として古来より盛んに栽培されてきたものです。
植物学としての大麻
大麻の学名は「Cannabis Sativa L(カンナビス・サティバ・エル)」と称され、このカンナビス(大麻)の品種は、カンナビス・サティバ、カンナビス・インディカ(Cannabis Indica)、カンナビス・ルデラリス(Cannabis Ruderalis)という3つの品種があるとされています。
しかし、カンナビス・サティバの一種のみがカンナビスであるという説もあり、この分類については植物界でも広く議論が行われています。
大麻の植物特性
大麻は、大麻草とも呼ばれる一年生草本であり、花をつけて開花する顕花植物です。
雌雄異株で雌の植物しか花をつけません。光周性の短日開花植物であり、日光などの光の長さ、サイクルによって開花段階に移行する植物です。
アサを大麻と呼ぶようになった理由
本来、大麻である「アサ」は「麻(アサ)」として表されてきましたが、明治期以降に海外から様々な種類の「麻」が日本国内に輸入されるようになったことにより、アサを「大麻」と呼ぶようになりました。
多くの麻が国外から輸入されるようになり、「アサ(麻)」という言葉が、植物学的にはそれぞれ異なる、「アサ」、「苧麻(ラミー)」、「亜麻(リネン)」、「黄麻(ジュート)」などの総称と同じ意味で使用されていました。
そこで、これら他の「麻」と「アサ」を区別するために「大麻(たいま)」という言葉が使われるようになりました。
ヘンプとマリファナの違いについて
ヘンプ、マリファナ、この両者において、違いを明確にするためには下記の4つのポイントにおける違いを理解することが重要です。
日本ではヘンプとマリファナは同じく、栽培や取り扱いが違法であることから、違いについてはアメリカの法律や世界的な取り扱いを例に違いを説明します。
- 含有成分
- 使用用途
- 法規制
- 栽培方法
ポイント① 含有成分
ヘンプとマリファナの違いとして特に顕著に違いを表すのが、それぞれに含有する成分の違いです。
含有成分では主にTHCとCBDのカンナビノイドの含有量や含有率に差があります。
- ヘンプ
THC含有率 0.3%以下 「ハイ」といわれる状態にはなりません。
ヘンプは産業用大麻とも呼ばれているところにもあり、その主な利用方法はマリファナのように陶酔感を得るといったものではありません。そのためアメリカではヘンプのTHC基準が0.3%以下、多くのヨーロッパの国ではTHC基準が0.2%と定められています。ヘンプは吸引のために成分を抽出されたものや、花穂を乾燥させたものを使用しても「ハイ」を感じることはないとされています。
- マリファナ
THC含有率 10~30%(特に基準はない) 「ハイ」といわれる状態になります
マリファナはヘンプのように決まった基準はありませんが、ヘンプを基準とすれば、THCを0.3%以上含む大麻はマリファナになります。また、マリファナはタバコやアルコールと同じく嗜好品としての利用の意味合いが強いため、THCの含有量に着目した、多くの品種が作られてきた背景があります。マリファナの場合平均して10~15%程度のTHCが含有されていますが、THCに特化した品種であれば30~40%のTHC含有量のものもあるようです。医療大麻においては、CBDの含有量が多い品種も使われており、THCとCBDの割合が1:1ものなど、症状や疾患にわせて色々な品種が使用されています。
大麻の主なカンナビノイド成分であるTHCやCBDの含有量の違いにとは別に、その他のカンナビノイドについてもヘンプとマリファナでは差があるとされてお、ヘンプよりマリファナの方が全体的なカンナビノイド含有量が多いということが言われています。
※THCやCBDに関して詳しくはこちらの記事を合わせてお読みください。
ポイント② 使用用途
ヘンプとマリファナの違いは使用用途においても違いがあります。
- ヘンプ
繊維、食品、燃料、CBD原料、建設素材、化粧品など
ヘンプは繊維、ヘンプシードオイル、ヘンプオイル、ヘンププロテインといった食品、バイオマス燃料、ヘンプクリートと呼ばれる建設素材など多種多様な用途があります。近年ではCBDの需要が増えたことや、規制の関係もあり、CBDの抽出原料として多く利用されています。
※ヘンプについて詳しくはこちらの記事を合わせてお読みください。
- マリファナ
嗜好用、医療用
マリファナをアルコールやタバコと同じく、主に「ハイ」といわれるような状態を娯楽的に楽しむために使用されます。大麻が合法なアメリカの州では、マリファナを使用したグミやブラウニー言った食品、電子タバコを使用した吸引など様々な方法で嗜好用品として楽しまれています。マリファナはその薬効成分に期待されることから、医療目的にも多く使われており、医療大麻に関連する疾患は250種類にも上るとされています。世界的にもマリファナに対する評価が見直されたり、合法化や非犯罪化が進んでいる要因はこれらの有用な医療用途にあります。
※嗜好用、医療用大麻について詳しくはこちらの記事を合わせてお読みください。
ポイント③ 法規制
ヘンプとマリファナの違いは法規制についても説明することが可能です。
- ヘンプ
2018年の農業関連法により、アメリカ全土で栽培や販売などに関して合法
アメリカでも以前はヘンプもマリファナも、カンナビス(Cannabis Sativa L)として国際条約「麻薬に関する単一条約」のアメリカ国内法である「規制物質法」により、「スケジュールⅠ」という最も危険な麻薬とする分類に位置付けられていました。しかし、2018年の農業関連法と呼ばれる法律の施行により、ヘンプは規制物質法から除外され、連邦法において違法ではなくなりました。アメリカではヘンプ栽培も一大産業となりつつある。
- マリファナ
アメリカの連邦法により規制の対象、しかし複数の州では合法
マリファナは依然として、アメリカ国内においては規制物質法という法律により規制されています。しかし、現在11の州では嗜好用、33の州では医療用のマリファナが合法化されており、「連邦法」では違法、「州法」では合法という矛盾が生じています。
ポイント④ 栽培方法
ヘンプとマリファナの違いは、栽培方法にも違いがあります。
- ヘンプ
屋外栽培、大規模
ヘンプの栽培は路地や屋外が多く、エーカー単位の大規模栽培が主流であり、温度、湿度、日光など気候や条件に関しては特に管理されていないことが一般的です。ヘンプはもともと植物としても強いため、簡単に育ち肥料や化学薬品を必要とせず、有機栽培も比較的簡単に行うことが可能とされています。
- マリファナ
屋内栽培、徹底した管理
THCやCBDといったカンナビノイドの含有量を左右する要因を徹底的に管理して栽培されます。数多くある品種によっても栽培への対応を変更しないといけないことから、適切に成長させるために、栽培に関する条件は注意深く制御され、温度、湿度、湿気のある湿度の高いハウスなどの屋内での栽培が多く行われています。
まとめ
今回はヘンプとマリファナについてご紹介いたしました!日本では両者とも違法であるため、アメリカや世界各国での取り扱いをもとに違いを説明しました。
両者ともに大麻ではありますが、それぞれに関わる法律や栽培方法、使用用途、含有成分など多くの違いがあります。
このように世界的にも大麻に対する再評価が行われている状況において、大麻についての知識を取得し、それらの知識をもとに考え、議論することは非常に重要なのではと思います。
この記事が、少しでも正しい知識を得るお手伝になれれば幸いです。
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