大麻は薬?麻薬?それとも植物?大麻の正体とは

Cannabis

「大麻(たいま)」という言葉を聞くと、どんなイメージをあなたはしますか?

日本に住む多くの人にとっては「禁止薬物、麻薬」といったものが多いのではないでしょうか。

多くの人が同じように学校では大麻について「ダメ、絶対!」というように学ぶため、本来の「大麻」の持つ意味について知る機会もなく、理解している人は多くないでしょう。

今回は「大麻」という言葉の由来や本来の意味についてご紹介します!

大麻(たいま)とは植物の「アサ(麻)」である

大麻という言葉は様々な意味を持ち、また大麻を表すスラング・隠語、別称など全て含めると数十~百種類以上あると言われています。

それぞれが異なった意味を持っていることもあれば、同じ意味をあらわすときもあり、ときには大麻は植物を、ときには薬物を、ときにはマリファナと呼ばれ、ヘンプとも呼ばれます。

このように数多くの表現があるためにその本来の姿、意味について知っている人は少ないかもしれません。

では、大麻の正体とは何なのでしょうか?

この問いの答えは、植物の「アサ(麻)」に辿りつきます。

植物の「アサ」とは?大麻・大麻草・Cannabis sativa Lについて

大麻(たいま)とは「アサ」であり、学名はカンナビス・サティバ (Cannabis sativa L)とされるアサ科アサ属の植物です。

大麻草とも呼ばれる一年生の草本で、人との関りは1万年を超える歴史があり、人類が栽培してきた最も古い植物のひとつとされています。

植物としては花をつけて開花する顕花植物、雌雄異体で雄雌が分かれ、雌の植物しか花をつけません。光周性の短日開花植物であり、日光などの光の長さ、サイクルによって開花段階に移行します。

非常に強い植物で、肥料などを使用せずとも簡単に成長します。そのため、北海道などでは毎年数万株の単位で自生している「大麻」が焼却処分されています。

日本では古来より、茎の皮の植物繊維は、麻繊維として麻紙や麻布、神道においては神具などに使用され、実(種子)は食用や生薬の麻子仁(マシニン)として、大麻の実の油は食用や燃料など、成分を医療にと様々な形で用いられてきました。

伊勢神宮の神札の「大麻(オオヌサ)」と呼ぶ由来となった植物であり、実生活に重要な三種の草という意味で、紅花(べにばな)・藍(あい)とともに「三草」のひとつに数えられ、米と並んで主要作物として古来より盛んに栽培されてきたものです。

カンナビスの種類

「アサ(大麻)」はカンナビス・サティバ (Cannabis sativa L)とされるアサ科アサ属の植物ですが、他にもアサ属の植物はあり、合計3種として言及されることが多くあります。

※アサ(和名)=カンナビス(英名 Cannabis)→ カンナビス科カンナビス属

  • カンナビス・サティバ・エル(Cannabis Sativa L) 
    カンナビス・サティバ・エルは中央アジア原産であり、中央アメリカ、アフリカ、アジアなどの熱帯地域とその周辺でよく見られます。 しかし、現在は各国でのカンナビス栽培や使用の合法化などにより、商業・産業的の世界中で栽培されているため、分布は世界中に広がっています。

    名称に付属しているエル(L)はカール・リンネによってこの植物が命名されたことによるものであり、カンナビス・サティバは多くの場合、成長すると高さが2〜4メートルに達します。
  • カンナビス・インディカ(Cannabis Indica Lam)
    カンナビス・インディカはサティバの後に発見され、元々はアフガニスタンやインドの一部など、乾燥した山岳地帯に分布していました。しかし、サティバと同じくカンナビスが合法化されてからは世界中で栽培が行われています。

    インディカはサティバよりも短く幅の広い葉を持ち、育っても短いままの低木です。
  • カンナビス・ルデラリス(Cannabis Ruderalis Janisch)
    カンナビス・ルデラリスは主に中国、ロシア、ポーランドの北半球において分布していますが、上記の二つと比べると栽培も少なく希少とされています。

    ルデリスは、過酷な環境や気候に強く、小さく丈夫な植物であり、成長しても60センチ程度です。 上記の2種においては光周性であり、日光や光のサイクルによって開花時期を決定しますが、ルデリスは他のカンナビスとは異なり、光の周期ではなく、植物の成熟度に基づいて開花段階に入ります。

カンナビスには一種しかないとされている説が有力

上記はカンナビスとして3つの種類をご紹介しましたが、今日の生物分類学では、遺伝子解析による分類でのカンナビスはアサ科アサ属の一属一種という説が有力とされています。

この中でカンナビス・サティバが本来の品種であると言われており、他のものは亜種、植物学名は参考程度となっています。

なぜ「アサ」が「大麻」と呼ばれるようになったのか??

なぜ「アサ」のことを「大麻」と呼称するようになったのでしょうか?

この理由は、明治期以降に海外から様々な種類の「麻」が日本国内に輸入されるようになったことに由来します。

多くの麻が国外から輸入されるようになり、「アサ(麻)」という言葉が、植物学的にはそれぞれ異なる、「アサ」、「苧麻(ラミー)」、「亜麻(リネン)」、「黄麻(ジュート)」などの総称と同じ意味で使用されていました。

そこで、これら他の「麻」と「アサ」を区別するために「大麻(たいま)」という言葉が使われるようになりました。

また「麻」という言葉は広義の意味では、特定の植物をさすのではなく、茎や葉脈からとれる繊維、つまり「植物の繊維」の総称として「麻」という言葉が使われます。熱帯の植物から寒冷地の樹皮まで、その種類はさまざまで、世界には数十種類にものぼる麻が利用されています。

「麻」と表示される植物由来の繊維
現在、国内では家庭用品品質表示法で「麻」と表示することが認められているのは、亜麻(リネン)または苧麻(ラミー)の2種類であり、大麻が原料のヘンプ・大麻繊維製品ではありません。大麻繊維は「指定外繊維(大麻)」や「指定外繊維(ヘンプ)」などと表記されています。

大麻を表すその他の言葉

下記に紹介する2つに関しても、元は同じアサ・大麻・カンナビスに違いはありません。

しかし、その用途や栽培方法、関わる法律、形成されてきた文化により、これらもまた違った名称で区別されています。

ヘンプ(Hemp)

ヘンプとは産業用大麻とも呼ばれ、植物のアサ・大麻の別称の一つです。日本でも古来よりアサ・大麻繊維が一般的な衣類の原料として使われてきたことを思うと、ヘンプは古来の日本の大麻という言葉の意味に一番近いものともいえるのではないでしょうか。

繊維の原料にも使われることから、ヘンプは大麻の繊維型とも言われ、他にもディーゼルエンジンなどに使用できる化石燃料よりも低公害なオイルを作ることができたりと、その活用方法は「捨てるところが無い」と言われるぐらい広い分野に及びます。

繊維以外にも「種」はオメガ3や6といった不飽和脂肪酸などの栄養素を非常に多く含んでいるため、麻実油、大麻油やプロテインなど健康食品として高い需要があります。また環境にやさしい建材「ヘンプクリート」として使われたり、同じく環境に優しい植物性のプラスチックの原料に使用されたりと、近年エコロジーの観点からも再認識されています。

北海道では毎年数万株のヘンプ・大麻が自生し、焼却処分されているほど、植物としても生命力が強く、3~4ヶ月で3~4メートルの成熟した植物となります。

世界的なヘンプ(産業用大麻)の基準では、含有される成分で精神活性作用のあるTHC(テトラヒドロカンナビノール)の含有量が0.2や0.3%以下となっています。

またアメリカでは大麻産業の急速な拡大により、ヘンプから抽出されるCBD(カンナビジオール)に注目が集まり、CBDを抽出する原料としても多く使用されています。

※ヘンプについて詳しくはこちらの記事を合わせてお読みください。

マリファナ(Marijuana) 

マリファナとは、ヘンプと同じく、植物のアサ・大麻の別称の一つです。日本では違法薬物の対象として、「大麻取締法」並びに、含有する成分であるTHCが「麻薬取締法」により規制されています。

マリファナは含有する成分またはTHCの精神活性作用を利用することから薬用型ともいわれ、アルコールやタバコと同じく、娯楽目的で「ハイ」「多幸」「陶酔」といわれるような状態や含有する成分の効果を楽しむために使用されます。また、THCやCBDといった含有する成分が、多くの疾患や症状の緩和に効果があるため、この効果を利用して、医療用としても使用されます。

世界的にはマリファナはヘンプのように決まった基準はありませんが、ヘンプを基準とすれば、THCを0.3%以上含むカンナビスはマリファナということができます。

また、マリファナはタバコやアルコールと同じく嗜好用品としての利用の意味合いが強いため、精神活性作用のあるTHCの含有量に着目され多くの品種が作られてきた背景があります。

マリファナの場合は平均して5%~15%程度のTHCが含有されており、THCに特化した品種であれば30~40%近くのTHC含有量の品種も栽培され、合法化された市場において見ることができます。

※ヘンプとマリファナについて詳しくはこちらの記事を合わせてお読みください。

まとめ

今回は大麻の正体についてご紹介しました。本来、「大麻」という言葉は植物の「アサ」を他の「麻」と区別するためのものであり、それが長い年月を経るごとに用途、法律、海外の文化、事件、事例などさまざまな要因により、その意味合いの幅が広まり、コンテキストによっては同じ「大麻」という言葉でも違った意味で使われるようになっています。

しかし、そのすべての前提として大麻が植物の「アサ」であることを理解しておくことは重要だと考えます。

また、日本では「大麻=麻薬」ということが、一般的には簡単に想起されるため、植物としての大麻やその他の大麻の言葉の持つ意味については、学校はもちろんですが深く正しい知識を学ぶ機会がほとんどないのが現状と言えます。

このことが大麻を語る上での誤解や誤認を生む要因でもあり、日本で大麻に関する議論が広まらない原因だとも考えます。

今後、筆者としては医療大麻やヘンプなど、大麻についての議論が日本でも広く行われることを望んでいますが、その前に大麻という言葉を「麻薬」「禁止薬物」といったものとして理解するだけでなく、一つの植物という観点から見直し、知識を得ていくことが必要だと感じます。

この記事が少しでも皆さんの正しい知識を得るお手伝いになれれば幸いです。

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