未成年者による大麻使用が減少?アメリカの大麻合法化における影響

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現在、世界的に様々な国において大麻に対する見方が変化しています。アメリカでは複数の州で大麻が合法化され、カナダやウルグアイでは医療用、嗜好用ともに国家単位での合法化、ヨーローッパの国では非犯罪化が行われるなどさまざまです。

大麻の合法化の是非については経済や公衆衛生、治安など様々な面で議論が行われています。その中で、議論のテーマの一つになるのが、大麻の合法化による未成年者の大麻使用の増加への懸念です。

今回は大麻合法化による影響の一つとして懸念される「未成年者の大麻使用」について、アメリカの例をもとにご紹介していきます!

アメリカで行われた未成年の大麻使用に関する調査

アメリカでは、大麻合法化に関連して、犯罪率の増加や未成年者の大麻使用の増加など、様々な悪影響を及ぼすのでは?といった議論が多くされてきました。

このような懸念への答えを出すために、未成年者の大麻使用について、下記のような調査が行われました。

調査概要

アメリカのモンタナ州の研究者によって行われた調査では、1993年から2017年までの期間で行われた全国青年リスク行動調査(YRBSS)といわれるレポートが分析調査されました。

このレポートでは、マリファナの使用に関する質問に対して140万人の高校生からの回答が記載されています。

レポート分析調査の結果

この全国青年リスク行動調査(YRBSS)のレポートの分析調査により、大麻が合法化された州における未成年の大麻使用の増加には関連性が見られず、逆に大麻使用が減少する傾向にあるということが示唆されました。

レポートが作成された期間中では、アメリカの27州で医療用大麻、7州で嗜好用大麻が合法化されていましたが、アメリカでは医療用大麻の処方を受ける一部の患者を除き、未成年者による大麻使用はすべての州で違法です。

このレポートを調査した研究者は、「過去30日間に少なくとも1回は大麻を使用した」と回答した未成年者の数が8%減少したことを発見し、また、過去30日間で大麻を少なくとも10回使用した数も9%減少したとしています。

上記の結果は、アメリカの非営利シンクタンクが行った以前の研究の結果と同じであり、この調査でも2012年に州が大麻を合法化した後、ワシントン州の未成年者の間での大麻使用が減少したと報告されています。

研究者達は、「大麻の合法化が未成年者の大麻使用を促進するという証拠は無く、逆に嗜好用大麻が合法化された州においては、未成年者における大麻使用が実際には減少するかもしれないことが示唆されている」としました。加えて「この結果が嗜好用大麻が合法化される場所で未成年者の大麻使用が増えるという懸念を抑える回答になるのでは」と語っています。

大麻合法化により、未成年者の大麻使用が減少した要因

これらの調査では、大麻が合法化された州における未成年者の大麻使用が減少傾向にあるという結果が報告されました。

しかし、これらの減少の要因となったものはどのようなものなのでしょうか?

要因① 大麻の販売に関する規制、闇市場の排除

大麻が合法化された州では、合法化に伴い、大麻の取扱いに関して様々な規制・ルールが施行されています。

その一つが大麻の販売など取扱いに関する規制であり、この規制が未成年の大麻使用を減少させている要因となっているようです。

具体的には、アメリカは州ごとに「州法」と呼ばれる法律があり、この州法によって各州で大麻に関する法律が定められています。各州に違いはあれど、使用や購入における「年齢制限」ではそこまでの差異はありません。

コロラド州を例にすると、大麻を購入可能な年齢条件は下記になっております。

1、購入や売買について  【年齢制限】

  • 21歳以上でなければいけない
  • 21歳未満の人がマリファナを購入、所有、または使用することは違法
  • 21歳未満の人にマリファナを譲る、販売する、共有することは犯罪
  • 購入の際は21歳以上であることを証明する有効なIDを提示する必要がある

一般的に大麻を購入するには、国から発行されるライセンスを所持し、法的に大麻を取り扱うことが可能な「ディスペンサリー」と呼ばれる大麻専門店にて購入すること可能です。

前述の州法のように、ディスペンサリーで大麻を購入する際には、お店に入る前や大麻の購入の際にIDのチェックがあります。この規制が未成年者の大麻購入を防いでいる要因になっています。

カリフォルニア州やコロラド州などの一部の大麻が合法化された州のディスペンサリーでは、IDチェック管理が徹底され未成年者が大麻製品が展示され販売されている売場にアクセスできないようにしています。

また、合法化以前から闇市場での大麻取引は問題となっていましたが、大麻が合法化された州では、以前は存在したライセンスを持たない違法な大麻を取扱い店は規制により排除され、一般的な大麻消費者も合法化により、ディスペンサリーで堂々と大麻を購入できるようになったことで、闇市場への需要が減り、闇市場は減少傾向にあります。

このことが、未成年者が大麻を入手することができる唯一ともいえる闇市場の減少により、未成年者の大麻使用を減少させるもう一つの要因となっていると言えます。

大麻合法化には規制による闇市場の排除も目標としており、闇市場による大麻取引が減少すれば、闇市場での大麻取引による資金が犯罪組織に流れるという資金源をも断つことができ、治安の向上や公衆衛生の改善につながるというものです。

要因② 大麻の栽培や流通に関する規制

大麻の栽培や流通に関する規制は、未成年への主な大麻供給源である闇市場への供給を最小限に抑え、未成年の大麻使用の減少の要因となります。

また、これらの規制は未成年の大麻使用の減少につながるだけでなく、偽物や粗悪品を取り締まることにより、大麻消費者へのリスクも軽減します。

大麻の栽培や流通に関しても販売と同じく規制があり、大麻の栽培を行うのにもライセンスが必要です。このライセンスの申請には多くの書類の提出が必要であり、栽培に関する設備、施設のセキュリティや人員などあらゆる項目において条件を満たさないといけません。

また、栽培後の大麻に関しても、栽培された製品の第三者機関での検査や、販売までの流通に関してもトレースしなければならず、栽培の数量、収穫量、どこにどのぐらい販売したかなどの記録をとり、報告しなければいけません。

このように栽培・流通・販売までの徹底された管理、ライセンス取得の高いハードルがずさんな業者や闇市場を排除し、大麻が未成年に渡るのを防いでいると言えます。

このように、大麻合法化による様々な規制と闇市場の排除が未成年者の大麻へのアクセスを難しくし、その結果減少に繋がったと考えることができます。

今後のさらなる課題として、大麻の正しい教育が必要

大麻の合法化による規制により、未成年の大麻使用の減少にはある一定の効果が見られます。

しかし、まだまだゼロになったわけではなく、今後、未成年者の大麻使用の減少させるにはさらなる課題への取り組みが必要とされています。

学校などへの大麻教育プログラムの導入

大麻製品への未成年者のアクセスの制限や、大麻栽培や流通の徹底した管理は、未成年の大麻使用を防ぐための一部の戦略にすぎません。今後さらに未成年者の使用の減少や、闇市場の排除にはさらなる施策が必要です。

大麻には15~20%程度の税金がかけられており、大麻合法化を行っている多くの州では莫大な税収を生んでます。このような大麻合法化によって得られる税収の一部を、
「大麻教育プログラム」に充ることでさらなる未成年者の大麻使用の減少や闇市場の排除に繋がるとされています。

大麻教育プログラムは、アルコールやタバコに関して幼少期から小学校や中学校などの学校で教育する方法と同じように、未成年の大麻使用がもたらす潜在的な危険性や、闇市場のリスク、大麻の医療用や嗜好用など正しい利用に関しての知識を広める最善の方法となりえます。

家族や友人など、多くの世代や人と大麻を正しく議論する機会を生む

大麻に関する教育は、未成年者自身に大麻使用のリスクや正しい大麻に関する知識を理解するだけでなく、その両親や家族にとっても良い影響を与えます。

子供、両親、家族間で医療や嗜好目的での大麻利用に関する正しい知識やリスクについて話し合う機会が生むことになり、多くの世代や年齢層に対しての教育を行うことにもつながります。

まとめ

今回はアメリカの大麻合法化における未成年者の大麻使用についてご紹介しました!未成年の大麻使用については減少の傾向にあるとの結果がでています。日本では未成年者の大麻に関連する逮捕者が年々増加傾向にあることを鑑みると、このような調査結果から学べることも多いのではと感じます。

現在、日本では「ダメ絶対!」というように、大麻に関しては禁止薬物としての側面しか学ぶことはなく、公の場で議論をすることも中々難しい状況です。

しかし、世界的には大麻に関する評価が見直され、アメリカやカナダのように合法化が進んでいる国や、ヨーロッパの複数の国では実質的な非犯罪化が行われている国もあるのが事実であり、世界的な潮流が厳罰ではなく、合法化や非犯罪化に向かっている中で、今後、日本でも大麻に関しての使用リスクや医療的用途など正確な知識を学ぶことは非常に重要なのではと思います。

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