UFCと大麻企業がパートナーシップを締結?格闘技界とCBDの関係

CBD

昨年2019年に、世界最大の総合格闘技団体であるUFC(Ultimate Fighting Camponship)がカナダに拠点を置く、大麻産業を代表する一大企業であるAurora CannabisとCBDに関する共同研究についてのパートナーシップの締結を発表しました。

今回はこのパートナーシップの概要と格闘技界とCBDの関係についてご紹介します!

CBD(カンナビジオール)とは

CBD(カンナビジオール、英:Cannabidiol)とは、植物の大麻で生成されるカンナビノイドと呼ばれる成分の一つです。大麻由来の成分と聞くと「麻薬」を連想されるかもしれませんが、CBDは「陶酔」や「ハイになる」といった症状を引き起こさない成分です。また、WHO(世界保健機関)でも安全性と一定の効果、効能があることが報告されています。

医療、美容、健康といった幅広い分野での効果が期待されており、アメリカ・ヨーロッパを中心に効果を利用した数多くのCBD製品が販売されています。

アメリカでは大麻由来の成分(CBD)を利用した医薬品として初めて「エピディオレックス(Epidiolex®)」が、国から認可され、難治性のてんかん治療薬として処方されています。

※CBDについて詳しくはこちらの記事を合わせてお読みください

UFCとは

UFCはUltimate Fighting Championshipの略であり、総合格闘技・MMA(Mixed Martial Arts)界における世界最大の団体です。

UFCにおいて使用される総合格闘技・MMAは打撃(パンチ、キック)、投げ技、固技(抑込技、関節技、絞め技)などの様々な攻撃法を駆使するフルコンタクトスポーツです。総合格闘技は文字通り、柔道、キックボクシング、テコンドー、ブラジル柔術、レスリングやボクシングなど、多くの格闘技スタイルも取り入れられています。

UFCの試合はオクタゴンと呼ばれる特徴的な8角形のフェンスに囲まれたリング上で行われ、男子選手は競技ショーツ、女子選手は競技ショーツと競技ウェアを着用し、オープンフィンガーグローブと、マウスピース及びファールカップ(男子選手のみ)の着用が義務付けられており、シューズや道着、ロングタイツの着用は禁止されています。

アメリカで団体が立ち上がった当初はルールが明確になく、その事から非常に暴力的で危険だと批判を浴び、禁止されるにまで至ったこともありますが、オープンフィンガーグローブの着用、階級制の導入など、時代と共に新たなルールが定められ、選手の技術が洗練されレベルも向上し、今では実力・人気、規模においても世界一の総合格闘技団体と言えるまでになりました。

UFCは世界最大の総合格闘技団体ではありますが、現在、日本人ファイターは少なく、近年日本では男子・女子ともに元PRIDEのスタッフが中心となって設立されたRIZINEが総合格闘技界では勢いを増しています。

UFCとAurora CannabisとのCBD研究パートナーシップ

UFCは、カナダに本社に置く、大麻産業の一大企業である、Aurora Cannabisとの複数年にわたるパートナーシップを発表しました。

このパートナーシップは、「グローバルパートナーシップ」と呼ばれ、パートナーシップにより支援される費用は数百万ドルにも及びます。主な目的は最新のテクノロジーを用いて、CBD製品をテストし、UFCで戦うファイター達のパフォーマンスへの影響を研究調査するものです。

総合格闘技は地球上で最も激しいスポーツの一つと言えるものであり、UFCはこの提携により、より速く、より良くファイター達が、試合やトレーニングセッション間で回復できるようになれば、ファイター達のパフォーマンスを上げるとともに健康とウェルネスへのサポートをさらに向上することができるとしています。

また、Aurora社はヘンプ由来のCBDがアスリートの回復にどのように影響するかについて、臨床科学が大幅に進歩することを期待しており、このパートナーシップから得られる情報により、Auroraはファイターの要望に合わせて製品開発を行い、データ蓄積・分析、そこからファイターたちにとってのベストプラクティスを導き出すことを目標としています。

きっかけとなったのはUFC選手のCBD使用

このUFCとAurora社の新たなCBDに関するパートナーシップを締結することになったきっかけは2016年のネイト・ディアスが起こした出来事です。

2016年8月に行われたUFC 202の興行における、対コナー・マクレガーとの対戦に惜しくも、判定負けを喫した際、対戦後の記者会見において、ネイト・ディアスが会見で堂々と、当時ではまだ禁止薬物とされていたCBDを配合したヴェイプペン(蒸気式の電子タバコ)を吸っていたことに始まりました。

ネイト・ディアズは、これにより、アメリカアンチドーピング協会から警告を受けるなどありましたが、試合後に行われたドーピング検査において異常が出なかったため、実際にはペナルティを課されることはありませんでした。

この有名になった会見以降、UFCのファイター達の間では、試合後のダメージの回復やトレーニングなど、ワークアウトにおける回復にCBDが多く利用されることになりました。

アメリカ全土でのヘンプの合法化とWADAによるCBDの禁止薬物から除外

以前からアメリカでの大麻に対する評価は見直されており、ネイト・ディアズの会見以降も時代の流れとともに、アメリカにおける大麻やヘンプ、CBDに関する扱いは法律的にも大きく変わりました。

現在ではアメリカでは11の州で嗜好大麻が、33の州で医療用大麻が合法化しています。

また、Aurora社が拠点を置くカナダでも、嗜好大麻が2018年9月に国内で合法化となり、国単位で医療、嗜好用ともに大麻が合法化されています。

アメリカのヘンプ(産業よ大麻に)については、2018年に農業法と呼ばれる法律により、CBDの抽出原料となるヘンプの栽培や販売、加工などが連邦法においても合法となりました。

また、ネイト・ディアズの会見時はCBDはドーピング違反となる禁止物質でしたが、2018年にWADA(世界アンチドーピング機関)が、CBDに関する評価を見直し、禁止薬物リストからCBDを除外するという大きな動きもあり、国々の法律はあるものの、CBDは国際的な競技大会ではアスリートも使用できるようになっています。

なぜファイター達は好んでCBDを使用するのか

UFCなどの総合格闘技の舞台で戦うファイターの試合が凄まじく、激しく、体への直接的なダメージなどの負担が相当なものであるのは映像で見ても明らかです。

また、UFCには階級制度があり、ファイター達は階級にあった体重で試合を行うため、厳しい減量やトレーニングとも戦っています。

厳しい試合、減量、トレーニングを行うUFCのファイター達にCBDのどのような効果が期待できるのでしょうか?

CBDに期待される効果① 睡眠の質や不安の改善

CBDにより、試合や減量、トレーニングへの不安やストレスを軽減し、ファイターやアスリートにとって重要な睡眠の質を改善することが期待されています。

ファイター達は対戦相手だけでなく、日々の厳しい減量によってもストレスや不安を感じています。また、ファイター達の鎧や武器ともいえる筋肉の修復と成長は、睡眠時に活発に行われるため、睡眠中には筋肉や骨の成長を促す成長ホルモンである、インスリン成長因子やテストステロンがより多く生成されます。このため、質の良い睡眠をとることは筋肉の修復や増強に大きく関わってきます。

CBDの睡眠や不安に関する効果については、まだまだ研究段階ではありますが、初期の研究段階では不安の改善や睡眠の質の改善について報告されています。また、消費者による数多くの実体験としての事例証拠は報告されています。

※CBDに関する睡眠と不安の効果については下記を合わせてお読みください

CBDに期待される効果② 試合やワークアウト後の痛みの緩和と回復

CBDに期待される痛みの緩和や抗炎症作用により、ファイター達の試合後の打撲などによる炎症や痛みの緩和、トレーニング後の筋肉痛の軽減や回復にも効果が期待されています。

ファイターの体を作る筋肉トレーニングと、試合での打撃による筋肉の損傷は、筋肉損傷からの回復という仕組みという観点では同じであり、それぞれに筋肉の損傷による炎症と痛み、患部の赤化、腫れなどの症状が出ます。

これらの痛みや炎症をCBDの使用によって緩和・治療し、筋肉の緊張を和らげ、痛みの軽減と同時に回復も早める効果が期待されています。

実際、CBDの抗炎症および鎮痛効果は、医療の分野でも関節炎や線維筋痛症などを含む慢性疼痛状態を持つ人々の間でも利用され数々の事例証拠が報告されています。

※CBDの抗炎症作用についてはこちらの記事を合わせて

CBDに期待される効果④ 副作用のある薬の代替

CBDに期待される痛みの緩和、抗炎症作用により、ファイター達が使用している副作用の強い薬や依存性のあるオピオイド系の処方鎮痛薬の代替になるということが期待されています。

日本では大きな問題にはなっていませんが、オピオイド系の鎮痛薬に関する依存症にによる死者は、交通事故による死者数を超えるといった状況があり、2017年には1日に約130人がオピオイド系鎮痛薬の依存症で死亡し、アメリカでは非常に大きな社会問題となっています。

オピオイド系の鎮痛薬に関わらず、どの薬にも用法や容量、使い方を間違えると深刻な副作用や依存症を引き起こします。

具体的には、イブプロフェンは、過度に使用すると胃潰瘍や肝臓や腎臓の問題を引き起こす可能性があり、オピオイド系の鎮痛薬は、さまざまな他の悪影響とともに、耐性と依存症を引き起こす可能性があります。

これまでは残念ながら、多くのファイターやアスリートにとって、痛みの緩和にこれらの鎮痛薬に頼り、対処することが唯一の選択肢であり、実際には依存症や薬の誤用により、命を落としたファイターやアスリートもいます。

このような状況があり、CBDには痛みの緩和や抗炎症作用の効果が期待されていることから、ファイターはこれまでの鎮痛薬に関連する危険な副作用を心配することなく、鎮痛剤やその他の医薬品より安全で健康的な代替品としてCBDを使用し、試合やトレーニングで負った痛みを効果的に軽減、回復できると期待しています。

CBDに関しても副作用がないということではありませんが、WHOでも比較的安全な成分と報告されていることや、現在もすでに多くのファイターや一般の消費者が使用していることを鑑みると依存性がなく、ほかの薬に比べ安全性は高いと言えます。

※CBDの副作用について詳しくはこちらの記事も合わせてお読みください。

CBDに期待される効果⑤ 神経保護作用

CBDには神経保護作用がにより、神経変性や外的要因による、脳や中枢神経へのダメージや損傷から回復させてくれる可能性が期待されています。

総合格闘技を戦うファイターだけでなく、プロ競技の世界においてはNFLやラグビー、サッカーなど多くのコンタクトスポーツでは、軽度・重度にかかわらず頭部外傷や脳震盪などが頻繁に発生するものがあります。

これらの脳や中枢神経系への外的要因による負荷やダメージは、脳細胞に損傷を与え、脳や中枢神経にかかわる様々な疾患や症状を引き起こし、中には命を落としてしまったり、後遺症により選手生命を失ったり、その後の厳しいリハビリ生活を余儀なくされます。

このような疾患、症状への治療や緩和にCBDの神経保護作用が期待されており、脳細胞の損傷の回復や新しい健康な脳細胞の成長を刺激するとされています。

実際、CBDの神経保護作用による、アルツハイマー病、ハンチントン病などの神経変性異常による疾患への研究も行われています。

CBDに期待される効果⑥ 集中力を高める

CBDがファイター達の集中力を高め、試合やトレーニングでのパフォーマンス向上への効果が期待されています。

CBDは体内で作られるカンナビノイドであるアナンダミドやセロトニンといった成分と相互作用し、スポーツや芸術の世界でも使う「ゾーンに入る」といった状態になるのをサポートする可能性が研究に示唆されています。

この期待される効果は、ファイター達は試合前に集中力を高めることだけにかかわらず、一般の方でもの仕事前や作業の前に摂取する最高のサプリメントになる可能性があります。

※CBDとゾーンに関しては詳しくはこちらの記事を合わせてお読みください

まとめ

今回はUFCとAurora社のパートナーシップと、格闘技界とCBDについてご紹介しました!CBDの効果に関しては、科学的に実証されているものは少なく、研究段階のものがほとんどです。このパートナーシップにおけるCBDの研究により、様々な臨床試験が行われるとされているため、大いに期待したいところですね。

格闘技やそのほかのスポーツでもCBDが使用されることが増えている状況もあり、日本でも今年は一気に認知が高まりそうな兆しがあります。

その中で、広告などに踊らされるのではなく、正しい知識を持ってCBDに接することがますます重要になってきます。

この記事が少しでも皆さんの正しい知識を得る少しでもお手伝いになれれば幸いです。

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