メージャーリーグで大麻が禁止物から削除?!オピオイド問題が背景に

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2019年12月に、アメリカのメジャーリーグ協会とメージャーリーグ選手会は、使用禁止物リストから大麻を削除することで合意したと発表しました。このようにアメリカの複数の州においての大麻合法化の流れはアメリカのスポーツ界にも影響を与えています。今回はこの合意の内容と背景について少しご紹介させていただきます!

リストからの大麻の削除と合意概要、背景

このような変化が起きた背景には、2019シーズンの直後に起こった悲劇大きな要因となっています。

現在メジャーリーグのロサンゼルス・エンジェルズで活躍中の大谷翔平選手の同僚だった、当時27歳のタイラー・スカッグス投手が急逝し、このタイラー選手の死因が「フェンタニル」と「オキシコドン」というオピオイド系の鎮痛剤によるものと判明しました。

この事件をきっかけに、この合意では新しいプログラムを採用し、大麻の検査ではなく「オピオイド」や「コカイン」に関する薬物の検査結果が陽性であるプレーヤーは、出場停止ではなく治療プログラムへの参加を義務ずけられることになりました。

大麻の使用を許可する決定は、大麻の医学的使用が処方鎮痛剤としては致命的な危険がないことを示すいくつかの研究によるものです。ハーバード大学医学部の専門家は、医療用大麻への合法的なアクセスがある州ではオピオイド処方の減少を確認しているとも報告しています。

以前の大麻使用の罰則は?
最初の大麻のテストでの陽性結果では、25試合。2回目のテストでも陽性で50試合。3回目のテストで陽性では100試合の出場が禁止。 4回目のテストも陽性であれば、プレーヤーは終身での出場が禁止されていました。また強制的な治療を拒否した場合は最高35,000ドルの罰金が科せられていました。

オピオイド系鎮痛剤とは

オピオイド系鎮痛剤とは、「オピオイド」は「麻薬性鎮痛薬」を指す言葉として用いられ、モルヒネ、フェンタニル、オキシコドン等があります。

通常は、手術中・手術後の痛み、外傷による痛み、分娩時の痛み、急性痛、がんによる痛み、神経が損傷された後などに長期間続く慢性痛に対して鎮痛薬として用いられます。

オピオイドは一般的に処方されているものであり、それ自体の服用に違法性はありません。

しかし、偏頭痛、肩こり、腰痛、膝の痛みなどの治療に有効である一方、一般的に麻薬と言われる禁止薬物のような陶酔感、恍惚状態をもたらす効果もあり、依存性が強まる性質があります。

アメリカのオピオイド系鎮痛剤に関する社会問題とは

アメリカではオピオイド系鎮痛剤による死者数が、交通事故による死者数を超えるといった状況があり、2017年には1日に約130人がオピオイド系鎮痛薬の依存症で死亡しており、社会的な問題となっています。

アメリカではこれらのオピオイド系の薬品に関しては、専門の機関や病院での使用が一般的でしたが、医者の処方箋があれば薬局等でも手に入れられるようになったことから、薬剤メーカーが新たなオピオイド系の鎮痛薬を開発・製造。

そして「より安全で、常習性がより低い」などの宣伝広告をTVコマーシャルなどで大々的に行い、大量のオピオイド系鎮痛剤が市場に出回ることになりました。また、この薬剤メーカーがロビー活動を強引に行い、政治家の力を使ってDEA(アメリカ麻薬取締局)の取締りも弱めました。

その後、この宣伝広告に踊らされて購入した一般市民たちから副作用、常習性の危険、服用による異常行動などのトラブルの訴えが相次ぎました。

また、医師が外来患者の求めに応じ、気軽に処方箋を出す傾向があり、通院回数が増えるたびに常習化が進み、服用量の増加に伴う副作用やトラブルに発展し、この医師の過剰な処方がこの問題を大きくした一因でもあります。

これらを受けてアメリカの食品、医薬品などを管轄するFDA(アメリカ食品医薬品局)が大掛かりな捜査を行い、2015年には医師22人をはじめ薬剤師、メーカー関係者ら含め280人が逮捕される大スキャンダルにまで発展しました。

しかし、その後も、中毒患者や過剰摂取による死者数が増え続けたため、現在のトランプ政権はようやく2017年11月、オピオイド危機に対する「非常事態宣言」を発令、処方箋を乱発した医師や、闇ルートの販売業者の摘発、厳罰措置を講じる事態となっています。

日本でオピオイドの問題はあるのか?

日本では目立ったオピオイドの問題は今のところ報告されていません。

日本の国民性というかべきかはわかりませんが、我慢強いというものも一つ要因になっているのかもしれません。日本では麻薬に関しては「ダメぜったい」のキャンペーンのように、麻薬に対して非常に強い拒否反応や嫌悪感があることもあいまって、アメリカのように医師が処方し過ぎたり、むやみやたらに患者が必要とするといった事もなく、逆に適正使用量と言われるものを実費使用量が下回っているそうです。

オピオイド系鎮痛剤がアメリカでは問題になっておりますが、定められた基準の中では非常に有用な薬剤であり、依存することもなかなか無いとされています。

競技スポーツにおける大麻やCBD使用に対する緩和の流れ

MLBの大麻使用の緩和と同じようにNHL(アメリカナショナルホッケーリーグ)でも大麻使用に関する議論がタイムリーに行われており、今後はアメリカの主要なスポーツでの大麻使用に関して緩和される流れがあると言えます。

大麻に関する成分全般ではありませんが、大麻の主要な成分の一つであるCBD(カンナビジオール)に関しては、WADA(世界アンチドーピング機関)が禁止薬物リストからCBDを除外しました。これ以降、アスリートは国際的な大会などでもCBDの使用が可能になりました。

このようなことから世界的にも大麻の成分に関してスポーツ界でも緩和に向かいつつあると言えます。

※CBDの安全性について詳しくはこちらの記事を合わせてお読みください。

まとめ

今回はアメリカのMLBにおける大麻の扱いとオピオイド問題を絡めて紹介いたしました。
スポーツ界においても大麻やCBDの使用に関して、緩和の流れにあると世界的に言えますが、アメリカでは緩和における要因がオピオイド系の鎮痛剤による大きな社会問題が背景にあることも事実です。

このように薬品であっても取り扱いを間違えれば副作用や依存で苦しんでいる患者もおり、物事には良い一面と悪い一面の表裏を持っているのが常であります。日本の現状では大麻に関しても同じことがいえるかもしれません。一方的な批判や思考停止といったものになるよりは知識を得て、学ぶことにより、日本でも医療に関する大麻の議論が今後行われることが多くの患者の利益につながるのではと思います。

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