ヘンプが土壌汚染をクリーンに!?繊維だけじゃないヘンプの凄い能力

Hemp

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ヘンプは、日本でも古来から繊維として衣類の原料として使用されていたり、種子は七味唐辛子やオイル、ヘンププロテインなどの健康食品としても一般的に広く使われています。実はヘンプの食品や衣料といった利用の他に、汚染された土壌をクリーンにする「ファイトレメディエーション」という作用に近年注目は集まっています。今回はそのヘンプが土壌汚染をクリーンにしてくれる作用についてご紹介します!

ヘンプ(Hemp)とは?

ヘンプとは大麻と同じアサ科の植物の一種であり、産業用大麻ともよばれています。ヘンプは繊維型とも言われ、日本でも古来よりヘンプ繊維として一般的な衣類の繊維原料として使われています。他にもディーゼルエンジンなどに使用できる化石燃料よりも低公害なオイルを作ることができたりと、その活用方法は「捨てるところが無い」と言われるぐらい他分野に及びます。

繊維以外にも「種」はオメガ3や6といった不飽和脂肪酸などの栄養素を非常に多く含んでいるため、麻実油、大麻油やプロテインなど健康食品として高い需要があります。また環境にやさしい建材「ヘンプクリート」として使われたり、同じく環境に優しい植物性のプラスチックの原料に使用されたりと、近年エコロジーの観点からも再認識されています。

北海道では毎年数万株のヘンプ・大麻が自生し、焼却処分されているほど、植物としても生命力が強く、3~4ヶ月で3~4メートルの成熟した植物となります。

世界的なヘンプ(産業用大麻)の基準では、THCと言われるカンナビノイドの含有量が0.2や0.3%以下にとなっています。またアメリカでは大麻産業の急速な拡大により、ヘンプから抽出されるCBDに注目が集まり、CBDを抽出する原料としても多く使用されています。

※ヘンプについて詳しくはこちらの記事を合わせてお読みください。

ヘンプと大麻はどう違うのか??

ヘンプと大麻は、いずれも同じアサ科の植物です。通常「カンナビス」や「マリファナ」と呼ばれる大麻には、日本で「麻薬」として規制されている成分の「THC(テトラヒドロカンナビノール)」が約15%程度含有されています。これに対して、ヘンプは国によって少しルールが違いますが、一般的にはTHCの含有量の基準が0.2ないし0.3%以下となっています。

使用用途に関しても違いがあり、大麻は「医療用大麻」として使われるように「薬効成分」の使用を目的としているのに対し、ヘンプは繊維や建材の原料、食用での利用を目的としています。しかし、アメリカを中心とした大麻の合法化による大麻産業の拡大に加えて、2018年のアメリカ国内でのヘンプに関する法規制の緩和により、ヘンプは「CBD」成分を抽出する目的での需要も拡大しています。

日本ではヘンプと大麻に関してはそこまで明確な区別はなく「大麻取締法」や「麻薬取締法」により規制の対象です。世界的にはヘンプと大麻は含有している成分の比率の違い、使用用途、法律による規制の違いがあります。

※CBDについて詳しくはこちらを合わせてお読みください。

ファイトレメディエーションとは

ファイトレメディエーション(phytoremediation)とは、植物が気孔や根から水分や養分を吸収する能力を利用して、土壌や地下水、大気の汚染物質を吸収、分解する技術。植物の根圏を形成する根粒菌などの微生物の働きによる相乗効果で浄化する方法も含む。バイオレメディエーションの一種。
「ファイトレメディエーション」Wikipediaより

このように、ファイトレメディエーションとは植物による、汚染物質の吸収・清浄作用と言えます。

ヘンプにもこのファイトメディエーションが備わっており、アメリカの実際の研究報告により注目が高まっています。

ヘンプを使った土壌汚染地での実験の概要

ヘンプを使用した実験は、複数のヘンプの品種を用意、その品種をさらに何グループかに分け、グループごとに条件が設定されます。

条件は野外か室内、鉱山の汚染された土壌か栄養剤を使用した土壌というように分けられました。

実験でカンナビノイドは実際に増えるのか?

この実験の結果、栄養剤を含んだ土壌で育てられたヘンプより、鉱山の汚染された土壌で育ったヘンプから採取されたCBDの含有量が多いことが発見されました。また、ヘンプの花穂から抽出されたCBDは、吸収された汚染物質も含んでいないとも報告されました。

これは非常に驚くべきことで、汚染された土壌で育ったヘンプは、より多くのCBDを生成し、加えて花穂から抽出されたCBDには重金属も検出されなかっというのです。

以前からこのファイトレメディエーションの作用により、ヘンプが重金属を含んでしまう可能性があるということはヘンプ農家では知られていたことでしたが、花穂に重金属が含まれていなかったということは特筆すべき点です。

一方で品種によってはTHCの含有量が増加してしまうという結果も中にはあり、ヘンプの基準である、0.2、0.3%以下というものには合わなくなってしまったようです。

なぜCBDが増えるのか

土壌汚染により、ヘンプは多くのストレスを受けその過程で、CBDの生産が増えるという事です。野菜でも良く言われていることで、ストレスをかけると野菜があまくなるイメージするとわかりやすいかもしれません。

これは、トマトで例えると、育てる過程であえて水を抜いたり過酷な環境下に置くことにより、トマト自身がその場に適応しようと果実の中に糖分や栄養を蓄え、結果的にトマトが美味しくなるというものです。

ヘンプに言い換えると、土壌汚染のような過酷な環境に置くことにより、ヘンプ自身が環境に適応しようとし、重金属を吸収、その作用で多くのカンナビノイドを生成するといったものです。

化学的な説明では、重金属は植物のヘンプに遺伝的反応を引き起こし、酸が通常よりも多く生産、これによりカンナビノイド生成量が増えるとされています。

研究者は加えて「特に、カンナビジオール酸シンターゼ(CBDAS)は、鉱山の土壌で18倍高い発現を示した。また、高重金属条件下では、CBDの総含有量が増加した。これはCBDASとOAC遺伝子発現によるものである」と報告しました。

チェルノブイリの除染で使われたヘンプ

1986年に起こったチェルノブイリ原発事故。この事故は世界最悪の原子力事故とされています。現在でも放射能汚染地域は30年以上たった今でも広く残っています。

この原発事故では実際にヘンプのファイトレメディエーションの作用が使用され、ヘンプは優れた除染能力があることを証明しました。

しかし、除外区域を汚染する放射性副産物であるセシウム137を除去するのには適しておらず、これを除去するのにはヘンプではなくアマランスの栽培品種が最適だとされています。

ヘンプによる土壌汚染とヘンプ産業の展望

ヘンプは植物としても強く、日本でも北海道などでは数万本の自生しているヘンプ(大麻)が毎年焼却されています。比較的簡単に育ち、環境適応能力も高いことからコストも低い。

このヘンプが汚染された土壌で育ち、クリーンになる。クリーンなった土地はまた再利用可能であり、副産物としてCBDや繊維、種子、低公害のオイルなどがつくられ、それらも利用できればそれこそエコロジーの観点からは非常に有用なものです。

土壌汚染と効くとピンと来ないかもしれませんが、最近では東京ガス豊洲工場跡地への築地市場移転問題では土壌中に環境基準を超えるベンゼン・シアン・鉛・ヒ素・六価クロム・水銀等の有害物質が残存していることが問題となりました。

このように、日本でも有害金属を含む土壌は工場跡地などに多く、工場跡地は閉鎖後にマンションや集合住宅地などに転用され、その際に問題になります。また、最終処分場の耐用年数も近年問題となっているので、日本でもヘンプによるファイトレメディエーションが有効的に使える可能性はあります。

世界的に見ても、アメリカやその他のヨーロッパ諸国でも土壌汚染は問題であり、特に現在の中国では土壌汚染を含む環境汚染は非常に大きな問題です。

現在世界規模では急速にヘンプに対する規制は緩和されてきており、アメリカや中国ではかなりの栽培面積があります。

今後海外ではヘンプ栽培とヘンプのファイトレメディエーションを利用した土壌汚染の清浄はスタンダードになるかもしれません。

まとめ

今回はヘンプのファイトレメディエーションの作用をご紹介しました!土壌汚染の清浄も行い、かつCBDも増える、そして副産物もたくさんあると言われればヘンプが持つ可能性というのは大きなものです。日本ではヘンプも含めて大麻の栽培は法律により禁止されているので行ってはいけませんが、近い将来、海外のようにヘンプの規制が緩和され、このファイトレメディエーションの作用を利用して土壌汚染をクリーンにする日が来るかもしれません。

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