2020年3月、厚生労働省から、CBDオイル、またはCBD製品に関するアナウンスがありました。
このアナウンスはCBD製品の輸入に関してのものであり、これは日に日に高まるCBDへの関心や、美容や健康に関連するCBD製品が国内市場でも多く見らるようになってきたことなど、CBDの国内市場動向を考えてのものだと思われます。
この記事では、厚労省からのCBD製品の国内輸入に関するアナウンスをもとに、業者や個人がCBD製品の輸入を行う場合に関わる規制やルールをご紹介いたします!
CBDとは
CBD(カンナビジオール、英:Cannabidiol)とは、植物の大麻で生成されるカンナビノイドと呼ばれる成分の一つです。大麻由来の成分と聞くと「麻薬」を連想されるかもしれませんが、CBDは
「陶酔」や「ハイになる」といった症状を引き起こさない成分です。また、WHO(世界保健機関)でも安全性と一定の効果、効能があることが報告されています。
医療、美容、健康といった幅広い分野での効果が期待されており、アメリカ・ヨーロッパを中心に効果を利用した数多くのCBD製品が販売されています。
アメリカでは大麻由来の成分(CBD)を利用した医薬品として初めて「エピディオレックス(Epidiolex®)」が、国から認可され、難治性のてんかん治療薬として処方されています。
CBD、CBD製品に関わる法規制
厚労省からアナウンスされた資料を確認する前に、基本的な知識として日本国内へのCBDの輸入や、使用、販売に関係のある日本の法規制について簡単にご紹介します。
CBDに関わる国内の法律は主に2つあります。
CBDは植物の「大麻」由来の成分であるため一つ目は「大麻取締法」、二つ目は「麻薬取締法」となります。
大麻取締法
大麻取締法は主に「大麻」を規制するものであり、概要としては「大麻取扱者」でなければ大麻の所持、栽培、譲渡などは違法になるというものです。
この法律の中で、「大麻」は下記に定められています。
第一条
この法律で「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く。
大麻取締法(昭和23年07月10日法律第124号)-厚生労働省HPより引用
この法律を根拠に大麻(草)の「成熟した茎及び種子」から抽出されたCBDは法規制の対象にはならないため販売、使用などが「合法」とされています。しかし、「(樹脂を除く。)」という一文があり、CBDも大麻より抽出した「樹脂」なのではという意見もあります。
また、上記の定めのように、成熟した茎及び種子以外から抽出したCBDに関しては規制の対象となるので注意が必要です。
麻薬取締法
CBDは直接的には「麻薬取締法」には関係しませんが、大麻由来のため、同じく大麻由来であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)が麻薬取締法による規制の対象となります。
麻薬取締法は下記のように麻薬及び向精神薬を規制する法律です。
第一条 この法律は、麻薬及び向精神薬の輸入、輸出、製造、製剤、譲渡し等について必要な取締りを行うとともに、麻薬中毒者について必要な医療を行う等の措置を講ずること等により、麻薬及び向精神薬の濫用による保健衛生上の危害を防止し、もつて公共の福祉の増進を図ることを目的とする。
麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)-厚生労働省HPより引用
この法律により、CBDと同じく大麻由来であるTHCには向精神作用があり、「ハイ」「多幸感」「陶酔感」といった影響を及ぼすために規制対象となっています。
ここでなぜTHCじゃないCBDが関わってくるのかというと、CBDはTHCと同じく大麻から抽出されるため、抽出方法や度合いよっては、CBD製品にTHCが含有する可能性があるからです。
その為、「CBD製品」もTHCを含んでいれば麻薬取締法の規制対象となる場合があります。
厚労省によるCBD、CBD製品の輸入に関するアナウンス内容
今回のアナウンス、資料は「CBD(※)オイル等の CBD 製品の輸入を検討されている方へ」と題されており、CBDやCBD製品を輸入する業者や個人に対し、違法となる「大麻」とは、規制の対象とならない「CBD、CBD製品」とは、輸入の際に必要な書類、審査を明文化したと言える内容です。
※こちらの資料が今回の厚労省のHPで確認できるアナウンスの原文です。
概要としては下記です。
- 確認部署が厚労省監視指導麻薬対策課から関東信越厚生局麻薬取締部へ
- CBD製品についての規定
- CBD製品の輸入について
- 例をもとにCBD製品の輸入についての具体例
下記に厚労省の資料内容をもとに、CBD製品の輸入に関してポイント毎に解説していきます。
ポイント① 確認部署が麻薬取締部(マトリ)へ変更
このアナウンスがある以前は、CBDの輸入に際しての確認部署は厚労省監視指導麻薬対策課となっていましたが、4月1日より「関東信越厚生局麻薬取締部」に変更となったことが案内されています。
関東信越厚生局麻薬取締部
麻薬及び向精神薬取締法、大麻取締法、あへん法、覚せい剤取締法、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例に関する法律等に規定する取締、許認可、中毒者対策等
麻薬取締部 – 関東信越厚生局HPより引用
このように関東信越厚生局麻薬取締部は厚生労働省管轄の麻薬取締部の関東信越を管轄する部署であり、麻薬取締部は「マトリ」という名前で知られており、ご存じの方も多いかと思います。
麻薬取締部の主な活動は上記にあるように麻薬取締法や大麻取締法によって定められている方に違反する違法行為を取り締まるための組織であり、実際の強制捜査など、法の執行権限を持つ「特別司法警察職員」で構成されています。
警察庁の管轄である「警察」とは違い、厚生労働省管轄の特務機関です。
この変更に関して言えることはより明文化することは規制の強化ととらえることもでき、昨今の大麻の譲渡や栽培による逮捕者の増加、海外大手CBDブランドの日本国内で販売されているCBD製品にTHCを含有していたなどなど、情勢を鑑みてのことと推測できます。
また、一番は2019年後半から現在にかけて急速にCBDに関する関心が高まり、市場が拡大しつつあることも要因と思われます。
ポイント② CBD製品とTHCの含有量について
CBDやCBD製品については、これまでアメリカや国外からの輸入の際には、簡単に言うと取り扱う業者が関係部署に確認し、税関での申請を行い、輸入されてきました。
しかし、CBD製品に関してはCBD自体が比較的新しいものであり、「CBDまたはCBD製品」というもの定義が明確でないところが国内では少なからずありました。具体的にはCBD原料やCBD製品には大きく分けて、フルスペクトラム、ブロードスペクトラム、アイソレート、ディストレートと呼ばれる抽出方法や度合いによって分類されています。
その中でフルスペクトラムCBDは、大麻草の全草からの抽出という考えのものであり、そのことからフルスペクトラムという記載のあるCBD製品には0.1~0.3%以下など少なからずTHCが含有している可能性が高く、これらの製品が日本の市場でも見つけることができます。
0%に近い微量のTHCでは精神や行動に影響はないとされていますが、日本ではTHCが規制されているため、厳密には輸入や販売などは禁止されるべきものであります。しかし、実際には微量のTHCを含んだ製品が出回っており、半ばグレーのような状態で消費者に渡っている状況がありました。
今回のこの資料では「CBD製品について」という項目により、明確に下記のように記載されています。
CBD 製品について
- 大麻草の成熟した茎又は種子以外の部位(葉、花穂、枝、根等)から抽出・製造され
た CBD 製品は、「大麻」に該当します。- なお、大麻草から抽出・製造されたかを問わず、大麻草由来の成分であるテトラヒ
ドロカンナビノール(THC)を含有する CBD 製品は、「大麻」に該当しないことが確
認できないので、原則として輸入できません。また、化学合成された THC は麻薬及
び向精神薬取締法で「麻薬」として規制されていますので、原則として輸入できま
せん。
※「大麻」の輸入は、大麻研究者が厚生労働大臣の許可を受けた場合にのみ可能です。また「麻薬」の輸入は、麻薬輸入業者が厚生労働大臣の許可を受けて輸入する場合等のみ可能です。- 「大麻」に該当する CBD 製品を輸出入、所持、譲渡、譲受した場合は罰せられる可能
性があります。- 化学的に合成された CBD は規制対象とされていませんが、輸入に当たっては「大麻」
でないことの確認を求められる場合があります。「CBDオイル等の CBD 製品の輸入を検討されている方へ」厚生労働省HPより引用
ここでの重要なポイントは、「大麻草の成熟した茎又は種子以外の部位(葉、花穂、枝、根等)から抽出・製造された CBD 製品は、「大麻」に該当します。」ということが明確にされており、言い換えれば「成熟した茎または種子」から抽出・製造されたCBD製品は「大麻」に該当せず、違法ではないということが言えます。
もう一つのポイントは「なお、大麻草から抽出・製造されたかを問わず、大麻草由来の成分であるテトラヒドロカンナビノール(THC)を含有する CBD 製品は、「大麻」に該当しないことが確認できないので、原則として輸入できません。」ということが明記されており、THCが0.2や0.3%など微量でも含有していると製品に関しては、「大麻」に該当するか否かが不明なため、輸入できないと規定されました。
つまり、前述したような今までフルスペクトラムとして精神や行動に影響が出ないとされている範囲のごく微量のTHCであっても、THCが含有する製品は輸入が原則できないということになっています。
今後は微量であってもTHCが含有されている製品に関しての国内の所持や販売、違法な輸入に関しての取り締まりや監視が厳しくなることが予想されます。
ポイント③ CBDを輸入するにあたって
実際のCBD、CBD製品の輸入にあたっては「申請、審査」が必要であり、「大麻」に該当しないことが認められないと輸入ができない、ということが資料より読み取れます。
3、CBD 製品の輸入にあたって
- CBD 製品の輸入をする際には、あらかじめ【問い合わせ先】に以下の資料を輸入の都
度、メールで提出してください。(資料送付先のメールアドレスは上記【問い合わせ
先】を参照。)- 輸入の前に提出を受けた資料を元に、対象の CBD 製品が大麻取締法の「大麻」に該
当するか否かを判断します。「CBDオイル等の CBD 製品の輸入を検討されている方へ」厚生労働省HPより引用
現在日本で販売されている製品に関しては今回の案内されている情報と同じく、通常CBD製品を輸入するには都度申請が必要であり、税関を通し、国内に入るという正規のルートを通っています。
しかし、中にはこのような正規のルートを通さず、申請も行わず、一般的な国際郵便で製品を仕入れている業者や個人も存在し、そういったルートで国内に入っているCBD製品には偽物や粗悪品、THCの含有の可能性があり、違法性や安全性の面からも問題となります。
この資料では、輸入の際には必ず申請、審査が都度必要であり、資料を元に「大麻」と該当されないCBD製品であれば輸入が可能ということになります。加えてこの申請で問題が無くても、税関にて再度資料の提出や検査をされることもあると記載されています。
もちろんこの審査で「大麻」と該当されるCBD製品または「大麻」と該当するか不明なCBD製品は輸入をすることができません。
ポイント④ CBD輸入のパターンAとパターンB
資料にはパターンA、パターンBとして2つのCBD輸入に関する具体例が示されています。
- パターンA【輸入しようとする CBD 製品が、大麻草から作られている場合】
- パターンB【輸入しようとする CBD 製品が、大麻草から作られていない場合】
「大麻から抽出されたCBDの製品の輸入」がA、「科学的に合成されたCBDの製品の輸入」がBとなっています。
輸入の際にはこの2パターンが主に考えられ、それらに必要な書類についての詳細が記載されています。この両方の場合で共通しているのは必要な書類が下記の要件を満たしている必要があります。
- 書類は全て CBD 製品の製造元等から入手する必要がある
- 書類は全て任意の様式
- 製造元等から入手した書類をそのままメールで送信
この上記に要件を満たし、なおかつAとBでそれぞれ準備する資料が下記になります。
パターンA「大麻由来CBD」の場合
- 証明書
「大麻草の成熟した茎又は種子から抽出・製造された CBD 製品であること」を証明する
内容の文書 - 成分分析書
輸入しようとする CBD 製品の検査結果が記載された分析書 - 写真
CBD の原材料及び製造工程の写真 - その他の必須資料
輸入者の氏名(会社名)
連絡先電話番号
パターンB「合成CBD」の場合
- 証明書
化学合成により得られた CBD を用いて製造された CBD 製品であることを証明する内
容の文書 - 成分分析書
輸入しようとする CBD 製品の検査結果が記載された分析書 - その他の必須資料
輸入者の氏名(会社名)
連絡先電話番号
ポイントまとめ
上記ではポイント毎に解説いたしました。下記は上記の内容をまとめたものになります。
- CBD製品の輸入にはその都度、指定された資料を元にした事前審査が必要であり、確認部署は関東信越麻薬取締部
- 輸入するCBD、CBD製品が大麻取締法の「大麻」に該当していないこと
- THCが少しでも含有しているCBD製品は輸入できない
- 麻薬取締部への審査で「大麻」でないと認められても、実際の税関で再提出、検査が行われることもある
まとめ
今回は厚労省からアナウンスされた資料を元に、CBD製品の輸入に関してご紹介致しました!この資料の意味としては、厚労省がCBD製品の輸入に必要な書類、審査を明確化したというところです。これまでは少しあいまいな部分があり、中には黒に近いグレーの製品も日本で見られていました。これにより、消費者の安全面や市場の健全性が図られることにもなり、ルールが明文化されることは良い傾向だと思われます。また、このアナウンスの意味はCBD市場が拡大している証拠とも言えます。
次第に制度化されていく中で、CBDの市場が健全の形成され、それらが世界の大麻の取り扱いや医療大麻といったものの議論がに繋がり、活発に行われるようになればいいのではないかと思います。
この記事が少しでも正しい知識を学ぶお手伝いになれば幸いです。
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